2人乗務の新基準とは?労基法・道路運送法・道交法を解説
2024/03/14
記事をご覧いただきありがとうございます。
行政書士事務所名越オフィス 名越です。
いよいよ2024年4月まで3週間を切り、新改善基準告示の適用が目前にまで迫ってきました。準備の進捗状況は如何でしょうか。
拘束時間や休息期間等の事項はたくさんのサイトで詳しく解説してありますので、今回はちょっとニッチではあるんですけれども、2人乗務について深掘りしていこうと思います。規定こそあるものの、実態は運賃的にそんなの厳しいよというのが現状でしょうが、実際に実効性があるものなのかどうか見ていきましょう。
目次
改善基準告示の2人乗務の規定とは?
まずは改善基準告示本文中の2人乗務の特例に関する規定条文と、関連する通達の抜粋を確認しましょう。
自動車運転者の労働時間等の改善のための基準
第4条第4項の二
自動車運転者が同時に1台の自動車に2人以上乗務する場合であって、車両内に身体を伸ばして休息できる設備があるときは、最大拘束時間を20時間まで延長するとともに、休息期間を4時間まで短縮することができること。
ただし、当該設備が自動車運転者の休息のためのベッド又はこれに準ずるものとして厚生労働省労働基準局長が定める設備に該当する場合で、かつ、勤務終了後、継続11時間以上の休息期間を与える場合は、最大拘束時間を24時間まで延長することができる。この場合において、8時間以上の仮眠を与える場合には、当該拘束時間を28時間まで延長することができる。
令和4年12月23日付基発1223第3号
自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の一部改正等について
第2 4(8)イ
自動車運転者が同時に1台の自動車に2人以上乗務する場合であって、車両内に身体を伸ばして休息することができる設備があるときは、最大拘束時間を「20 時間」まで延長するとともに、休息期間を「4時間」まで短縮することができること。
ただし、当該設備が自動 車運転者の休息のためのベッド又はこれに準ずるものとして局長が定める設備に該当する場合で、かつ、勤務終了後、継続 11 時間以上の休息期間を与える場合は、最大拘束時間を「24 時間」まで延長することができること。
また、この場合において「8時間以上」の仮眠時間を与える場合には、当該拘束時間を「28時間」まで延長することができること。
「局長が定める設備」とは、次のいずれにも該当する車両内ベッドをいう。
(ア)長さ 198cm 以上、かつ、幅 80cm以上の連続した平面であること。
(イ)クッション材等により走行中の路面等からの衝撃が緩和されるものであること。
「これに準ずるもの」については、車両の技術開発の動向等を踏まえ検討されるものであり、現時点では上記(ア)(イ)に該当する車両内ベッドのみが、ただし書の特例の対象となる。
特例通達においては、2人乗務の場合には、拘束時間を「20 時間」まで延長し、休息期間を「4時間」まで短縮できるとされていたが、馬匹輸送(競走馬輸送)におけるトラックの運行実態等を踏まえ、トラック運転者の疲労の蓄積を防ぐ等の観点から車両内ベッド等が一定の基準を満たす場合には、拘束時間を延長できることとしたこと。また、「20 時間」を超えて拘束時間を延長する場合には、一の運行終了後、「継続 11 時間以上」の休息期間を確保する必要があるとしたこと。
なお、車両内ベッドについては、関係法令の趣旨を踏まえ、安全な乗車を確保できるようにする必要があるところ、例えば、運転席の上部に車両内ベッドが設けられている場合、当該車両内ベッドにおいては、安全な乗車が確保できないことから、2人乗務において使用することは当然に認められない。
では規定を読み解いていきましょう。
「2人乗務」でかつ「身体を伸ばして休息することができる設備」があるときは、最大拘束時間を「20 時間」まで延長し、休息期間を「4時間」まで短縮することができるとあります。
拘束時間が原則13時間以内、最大でも15時間以内、休息期間は9時間を下回らないようにしなければならないので、かなり緩和される規定といえるでしょう。
さらにただし書きで、「厚生労働省労働基準局長が定める設備」に該当するベッドを備え、かつ、勤務終了後に休息期間11時間以上を継続して取らせるとこで最大拘束時間を「24時間」まで延長でき、その拘束時間内に8時間以上の仮眠を与えれば、拘束時間を最大「28時間」まで延ばせます。
あくまでも特例は当日の拘束時間・休息期間のみなので、月の最大拘束時間や週の拘束時間14時間超えは2回まで、2週平均の運転時間44時間等の他の規定に特例はありませんので、原則が適用されることには注意してください。
身体を伸ばして休息することができる設備?
規定の中に設備が2つ出てきました。
①「身体を伸ばして休息することができる設備」②「厚生労働省労働基準局長が定める設備」です。
②についてはばっちり基準が書いてあります。
(ア)長さ 198cm 以上、かつ、幅 80cm 以上の連続した平面であること。
(イ)クッション材等により走行中の路面等からの衝撃が緩和されるものであること。
キャビン上部のスペースは同項で除外されてますので、運転席後方のスペースに設置すれば良いのかと思いますが、ここで(ア)の幅の基準がひっかかります。通常後部スペースの幅は概ね65cmほどです。
つまりメーカーが新寸法でトラックを生産しない限り、後部スペース以外で②の設備を準備しなければならないのです。
①については全く書いてありません。管轄局や監督官によって解釈が相当分かれるのではないかと思います。
別の某コラムではリクライニングした助手席が該当するとの記載がありました。私個人の見解でいえば、後部スペースは②には該当しないものの、①には該当するのではないかと思っていますが、確証はありません。少なくとも管轄の運輸支局監査部門に問い合わせは必ず行いましょう。
ん?何だか雲行きが怪しい・・・
2人乗務をする最大の利点はやはり1人が休んでる間にもう1人が運転できることでしょう。それができなければ正直あまり意味がないですよね。拘束時間が5時間伸びたところで同時に休まなければならないのなら、トラック2両で15時間勤務してもらった方がより多くの貨物を運べます。
今私の頭の中には2つの疑問が生じています。
(1)いまや全席シートベルトをしなければならないけど、後部スペースにシートベルトは無いんだが?
(2)一方が運転してるとき、運転席内で休んでるけど、走行中の運転席内って職場離れてなくない?
まず(1)ですが、警察に問い合わせしました。
回答は要約すると以下のとおりでした。
「後部スペースは道路交通法第55条で言うところの乗車のために設備された場所とは言えないため、違反となる可能性が高いです。」
要するに後部スペースは荷台です。後部スペースに人を乗せて走行はできません。道路交通法第56条第2項に特例許可の規定があるのですが、諾否の明言はありませんでした。
こうなってくると車両の構造変更や諸々出てくるのですが、最早考慮するところではないので割愛させていただきます。
となると、運転しながら走行するには助手席しか選択肢が残されていないのですが、ここで(2)の疑問です。
休息期間とは使用者の拘束を受けない期間のことを言います。
通常長距離運行でパーキングエリア等で休息している場合でも、本来業務の運転から離脱して自由に行動できるから休息期間として認められています。
(2)については労働基準監督署に問い合わせし、以下のとおり回答を得ました。
「走行中の運転席内で仮に仮眠を取っていたとしても、使用者の拘束を受けていないとは言えず、休息期間には該当しない。」
この回答を以て、走行中の休息は認められず、最大20時間走行した後、パーキングエリア等で駐車して2人同時に最低4時間の休息を取らなければならないことが確定しました。さらにただし書きは全く意味を成しません。
この結論は、大前提として助手席が「身体を伸ばして休息することができる設備」として認められる場合です。
※あくまでも今回の問い合わせ結果を踏まえたうえでの結論です。監督官等によって回答が変わる可能性は十分あり得ます。当記事は2人乗務特例の適用を担保するものではありません。
そもそもの話ですが・・・
そもそも2人乗務の規定が、馬匹輸送(競走馬輸送)におけるトラックの運行実態等を踏まえ~と通達内でも記載があるように、超マイナーな輸送形態を基に決められているものでした。告示条文中にその記載がなく、通達だけでこっそり注釈されたのではどの会社でも可能であるかのように示されていまい、多くの誤解を生んだのではないかと思います。
それもあってか、昨年11月に国交省で実施された車両安全対策検討会において、議題として取り上げられました。リンクを貼っておりますので、ご興味のある方はお読みください。
さらに先月(公社)全日本トラック協会のホームページ内にて、国交省によるトラックの車室内に設置されているベッドの使用実態に関するWeb調査が実施されていました。
今後の展開
トラックの技術要件やWeb調査結果をふまえて、馬匹輸送に限らず、全事業者が一定の検討ができるような基準が定められることを期待したいと思います。
今月にまた車両安全対策検討会が実施される予定だそうなので、国交省の動向にも注視していきたいと思います。
当記事を最後までご覧いただきありがとうございました。
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